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2023.6.13

「相続放棄の手続きは自分でもできる?」申請方法と相続税の計算における相続放棄の注意点を徹底解説!

1.相続放棄とは?相続放棄を検討したほうがいいのはどんな人?

相続とは、ある人が死亡したときにその人の財産(すべての権利や義務)を、特定の人が引き継ぐことを指します。簡単に言い換えると、亡くなった人の財産を配偶者や子どもといった関係者がもらうことです。

相続では、この亡くなった人を「被相続人」、財産をもらう人を「相続人」と言います。

そして、相続人は相続が発生したときに、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続します。

そこで、預貯金や有価証券等のプラスの財産がほとんどなく、多額の借金だけが残ってしまうという方の事情を考慮して『相続放棄』という手続きが認められています。

相続放棄の注意点としては、プラスの財産もマイナスの債務も全く取得しないことになります。そのため、相続財産に現在の居住地である自宅が含まれている場合、相続放棄を行うと自宅も放棄することになるので、財産債務の内容をきちんと把握することが大切です。

また、相続放棄はいつでも手続きできるものでなく、期限があります。例外もありますがほとんどの場合が『自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内』に家庭裁判所に申述しなければいけないため、期限を過ぎないように注意して手続きする必要があります。

2.相続放棄のメリット・デメリット

  • メリット

①被相続人の債務から解放される

被相続人に借金があった場合、相続によって相続人にその返済義務が生じます。そのため、被相続人が借金の返済が滞っていた場合もその債務を引き継がなければなりません。しかし、相続放棄をすることによって、借入金等の債務を回避できます。これは相続放棄最大のメリットともいえます。

②相続の揉め事に関わらなくて済む

相続において、親族間でもめごとが生じるケースが稀にあります。しかし、相続放棄をすると相続人ではなくなるため、相続に関わる権利関係から離れます。そのため、遺産分割協議で揉めてしまうようなケースでは、相続人間での紛争に巻き込まれるというようなことも回避することが出来ます。

  • デメリット

①すべての相続財産を手放すことになる

被相続人と同居をしていた場合、家も財産に含まれるため相続放棄をした人は同居していた家から退居しなくてはなりません。その場合、テレビなどの電化製品も被相続人の所有物である場合勝手に持ち出すことはできません。

②やり直しがきかない

一度相続放棄をすると原則として撤回や取り消しはできません。当初把握していなかったプラスの財産が放棄の手続き後に見つかった場合でも、相続放棄をした場合、撤回や取り消しは原則としてできません。

そして、放棄の期限が3ヶ月と限られた時間で行わなければいけないため、相続放棄の手続きを検討する場合は、撤回や取り消しができないことを考慮して財産・債務の把握を迅速に行うことが必要となります。

③下手に遺産をいじると放棄が認められない

相続放棄をした場合でも、その後の行動によっては「相続放棄をしたことが認められなくなる場合」があります。例えば、被相続人の財産を使用したり、処分したりすると相続を承認したものとみなされることがあるため、被相続人と同居をしていた場合、そのような行為を行っていなかったか細心の注意が必要となります。

④相続順位が変動し、他の相続人間でトラブルになる可能性がある

相続放棄をすると、相続放棄をした人ははじめから相続人ではなかったとされ、次順位の相続人に相続の権利が移ります。そして、これがトラブルを引き起こすケースがあります。

例えば…

父親の相続財産について借金があり、相続人は子どもである自分だけ(兄弟がいないケース等)というような場合、相続放棄をしたとき、祖父母(亡くなった父親の両親)が生きていればその祖父母が相続人になります。祖父母は借金の存在を知らずに、承認してしまうという事態になりかねません。

3.相続税の計算における相続放棄の注意点

相続税の申告が必要なケースにおいて、相続放棄を行う場合の注意点を解説します。相続放棄については、相続税の申告においても影響があるため要点をおさえておく必要があります。

  • 相続人の扱い

相続放棄を行った人は、当初から相続人が存在していなかったものとして取り扱われます。そのため、放棄を行ったことによって相続人が変わる可能性があるため、注意が必要です。

デメリット④でも解説した通り、相続人が配偶者・子であった場合に、子が相続放棄を行うと、相続人の順位が次の順位になるため『配偶者と被相続人の両親』や『配偶者と被相続人の兄弟姉妹』になる可能性が生じます。

このような場合、相続人の人数が変動したとしても相続税の計算上では、相続人の人数は変わりません。つまり、放棄前の相続人の人数で計算をし、相続税の負担は、放棄後の相続人間で税金の負担を行います。

また、遺産分割協議も次の順位の相続人と行わなくてはいけません。

相続放棄を行う場合には、放棄の手続きに伴って相続人になってしまう人に対しては、その事実を関係者が迅速に伝えることが大切です。

なお、放棄を行った人はそもそも相続人でなかったという位置づけになります。

相続人である子が、被相続人の相続発生前に死亡していた場合、その子の子、つまり、被相続人から見て孫が相続人になる『代襲相続』という扱いにはなりません。

  • 相続税の納付

相続放棄を行った方は相続人ではなくなるため、財産も債務も取得しません。そのため、申告も納税も原則的には生じません。

しかし、1つだけ例外があります。

それは、相続放棄を行った方が『生命保険金』を取得した場合です。

相続放棄は、遺産分割の対象となる財産・債務が対象となりますが、生命保険金は、その保険の契約上の取得者の財産となります。

つまり、『保険の契約上の受取人』が相続放棄を行った方であった場合には、生命保険金は例外的に取得することが出来ます。

相続税の計算において、生命保険金は、一定額(500万円×相続人の人数)の非課税枠があります。この非課税枠は、相続人によって財産を取得する方に適用され、相続放棄を行う方は対象に含まれておりません。そのため、非課税枠は適用されませんが、保険金は受け取れることになります。

トータルの財産規模によって、相続税の納税が発生する場合には、非課税枠が適用されないことになってしまうので、相続税の納税が生じるケースは放棄を行った人も相続税の申告・納税が必要になるため気を付けなければなりません。

4.相続放棄の手続き方法

相続放棄の手続きで必要な書類や手順について4つの段階に分けて解説します。

①必要書類を集める

・故人の戸籍謄本

・故人の住民票(住民票の除票) or 戸籍の附票

・相続放棄を行う方の戸籍謄本(現在戸籍)

・相続放棄申述書

・収入印紙800円分(相続放棄申述書に貼り付けします)

・郵便切手

※状況に応じて上記以外で必要な書類があります。

②管轄の家庭裁判所へ『必要書類』を持参 or 郵送する

『必要書類』を集め、『相続放棄申述書』に必要事項を記入の上、提出を行います。

なお、提出を行う前には、事前に家庭裁判所に電話確認を行うことをお勧めします。

管轄の裁判所は、故人の最後の住所地を管轄する裁判所になります。

下記リンクを参考に検索してください。

管轄の裁判所を検索

https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html

相続放棄申述書のフォーマット

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_souzokuhouki_m.pdf

③家庭裁判所から送付される『照会書』に記入して、返送する

必要書類提出後に、家庭裁判所から、『照会書』が届きます。これは裁判所からの放棄に関する質問状となります。そのため、なぜ放棄を行うことになったかという質問に回答する内容となります。

④『相続放棄申述受理通知書』が届く

『照会書』を返送し、放棄が認められた場合には、通常、約1~2週間程度で『相続放棄受理申述書』が送られてきます。

これによって相続放棄が認められたということになります。

書類の準備や手続きのミスによって相続放棄が認められなくなってしまったということがないように注意しましょう。

5.まとめ

相続放棄は期限が3ヶ月と短く、また、必要な書類が複数あります。

また、被相続人に借金があった場合、相続放棄を検討することになりますが、相続放棄にはメリットだけでなくデメリットもあります。そして、相続放棄をしてしまうと原則として取り消すことはできないため、きちんと検討し、行う場合には迅速に手続きする必要があります。

税理士法人ブライト相続 戸﨑 貴之 監修

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