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「タンス預金」は相続税対策にならない?時効は?など詳しく解説します

「タンス預金」という言葉を聞いたことはありますか?タンス預金とは、金融機関に預けることなく自宅に保管しているまとまった現金のことをいいます。
すぐに現金が利用できるという利便性から多くの方がタンス預金を保有しているとされています。もちろんタンス預金を所持しておくことには問題はないのですが、この手元の現金を相続時に相続財産に計上しないとなると非常に問題になるため、相続の現場では問題視されるテーマの一つです。
ではこのタンス預金について、メリット・デメリットや万が一申告せずに税務署にばれたらどうなるか、また時効はあるのかなどについて詳しくご紹介していきます。
Contents
1. タンス預金とは?
繰り返しになりますが、タンス預金とは金融機関に預けることなく自宅に保管しているまとまった現金のことをいいます。現金の保管場所はタンスに限らず、引き出しや屋根裏部屋、金庫、仏壇、冷蔵庫などでも、それらはすべてタンス預金に入ります。
日本は諸外国に比べると、現金での資産保有率が高いと言われています。実際に2021年に日銀が公表した統計結果によりますと、個人の保有現金が100兆円を超えたということです。
もちろんタンス預金自体は法的にまったく問題ないのですが、先ほどの事例のように相続税を減らすために悪質な隠し方をすると、大きなトラブルを招くことになります。
2. タンス預金のメリット・デメリットは?
ではそんなタンス預金ですが、メリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。
一つ目のメリットは、手間をかけずにいつでも自由に現金が使えることです。突然お金が必要になった場合に、金融機関に出向いてお金を引き出すのは手間も時間もかかってしまいます。ですが、自分の手元に現金を保管しておけば必要な時に必要に応じて使うことができます。
二つ目のメリットは、相続発生時に口座が凍結された際でもお金の出費に困らないことです。金融機関が口座名義人の死亡の事実を知ると、その口座は直ちに凍結されお金を引き出すことができなくなります。お金のほとんどを金融機関に預けていると、葬式費用や相続税などまとまったお金を支払う際に家族や身内が困ってしまう可能性がありますが、手元に現金として持っていればその心配はありません。
反対にタンス預金のデメリットの一つ目は、紛失のリスクがあることです。タンス預金をしてから長い時間が経ってしまうと、つい現金を置いた場所を忘れてしまう可能性があります。当たり前のことですが、どこに置いたかを忘れてしまうと使いたいときに使うことができないので、現金で保有する意味をなさなくなってしまいます。
デメリットの二つ目は、遺産相続トラブルの要因となる場合があることです。タンス預金は存在の証明が難しく、故人の死後に万が一誰かが勝手に持ち出されてもそれを証明できない可能性が高いです。また、タンス預金は保管場所を家族が把握していないこともあり、遺産分割後に発見されると一から遺産分割をやり直す必要が出てきて手間がかかってしまう可能性もあります。
3. 相続税対策にはならない!タンス預金はなぜバレる?
相続税は累進課税制度であるため、遺産が多ければ多いほど相続税額も高くなります。そのため、「自宅にタンス預金を隠しておけば相続税を抑えられる」や「税務署に見つかりさえしなければ申告しなくてよい」と考える人もいるかもしれません。
しかし、実際にはタンス預金は相続税対策にはならないだけではなく、税務署にばれてさらに大きなリスクを負うことになります。
なぜ税務署にタンス預金がばれるのかと申しますと、税務署が国税総合管理システム(KSKシステム)を用いて、故人の資産をおおまかに把握しているからです。
KSKシステムとは、国民のお金の流れや個人の所得水準などを詳細に管理している税務署のデータ管理システムです。そのため、この蓄積された過去のデータと相続税申告の内容に乖離がある場合や、課税対象となるはずの人が相続税の申告をしていなかったりすれば、税務署に目をつけられて税務調査の対象となります。税務調査をされると、タンス預金の存在は高確率で発覚してしまいます。もちろん調査の結果虚偽の申告が発覚した場合は、重いペナルティを課せられる恐れがあります。
これらの理由からタンス預金は高確率で税務署にばれてしまい、相続税対策にならないだけでなく、むしろ余計な追徴課税が課せられる可能性もあるため、絶対に避けるべきだということです。
4. タンス預金が税務署に知られた場合のペナルティ
では、タンス預金が税務署に知られた場合に課税される税金はどのようなものがあるのか、見ていきましょう。
4-1. 無申告加算税
無申告加算税は、相続税がかかるのに申告をしなかったときに課される税です。税率は、本来納付すべき税額がいくらかによって異なります。(申告期限が平成29年1月1日以降の場合)
〇税務調査の事前通知より前に自主的に修正申告をした場合:5%
〇税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでの間に修正申告をした場合
(1)相続税額のうち50万円以下の部分:10%
(2)相続税額のうち50万円を超える部分:15%
〇税務調査の事前通知を受けてから修正申告・更生を受けた場合
(1)相続税額のうち50万円以下の部分:15%
(2)相続税額のうち50万円を超える部分:20%
また、無申告加算税は、あくまで相続税がかかることを知らずに申告をしなかった場合に課される税で、意図的に申告しなかったとみなされた場合は、後に説明する重加算税が課されます。
4-2. 過少申告加算税
財産を隠すなどの意図がなく、相続税の申告書の金額が足りなかった場合に課せられる税です。追徴課税額によって以下のように割合が変わってきます。(申告期限が平成29年1月1日以降の場合)
〇税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでの間に修正申告をした場合
(1)追加課税額が当初申告した税額または50万円のいずれか多い方で以下の部分:5%
(2)追加課税額が当初申告した税額または50万円のいずれか多い方で超える部分:10%
〇税務調査の事前通知を受けてから修正申告・更生を受けた場合
(1)追加課税額が当初申告した税額または50万円のいずれか多い方で以下の部分:10%
(2)追加課税額が当初申告した税額または50万円のいずれか多い方で超える部分:15%
過少申告加算税は、税務調査の通知前に自主申告をすれば科されません。万が一申告ミスに気が付いた場合にはいち早く修正申告を行うようにしましょう。
4-3. 延滞税
相続税の納付期限までに相続税を納付しなかった場合に発生する税です。税務調査で申告漏れを指摘されて修正申告をする場合など、本来申告しなければならない期限を過ぎているときには必ず発生します。
延滞税は納付を遅れた時期によって以下のように2段階に税率が変わってきます。
〇相続税申告期限の翌日~2ヶ月:延滞税7.3%/年 or 延滞時特例基準割合+1%
〇相続税申告期限から2ヵ月超:延滞税14.6%/年 or 延滞時特例基準割合+7.3%
4-4. 重加算税
財産を隠蔽したり、わざと少なく申告したり、意図的に申告しなかったとみなされたときに課される税です。重加算税は悪質な行為に対すペナルティなので、課税額も以下のように非常に高くなります。
〇申告書を提出していた場合:35%
〇申告書を提出していない場合:40%
4-5. 刑事罰
4-1~4-4の追徴課税のほかに、脱税だと判断されると刑事罰を受ける可能性があります。
脱税犯
虚偽や不正行為などによって相続税を脱税した場合には、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される恐れがあります。
故意の申告書不提出犯
期限内申告書を期限までに提出せず相続税を脱税した場合には、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科される恐れがあります。
無申告犯
正当な理由なく、期限内申告書を期限内までに提出しなかった場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される恐れがあります。
5. タンス預金に時効はある!?
相続税には時効があります。そのため、タンス預金が税務署から指摘されずに一定期間を経過すると、時効の成立により申告や納税義務が免除されることになります。
相続税の申告・納税期限は「相続発生を知った日の翌日から10カ月以内」であり、その翌日から次の年数が時効となります。
・申告、納税が必要だと知らずに未納だった場合:5年
・申告、納税が必要だと知っていて未納だった場合:7年
しかし、先程も申し上げたように税務署は個人の資産をおおよそ把握しているため、申告するべきものを申告しなかった場合に時効で逃げ切るのは難しいでしょう。
税務署から逃れようとすると、本来の納税額よりもかなり多額のペナルティを支払うことにもなりかねないため、きちんと申告額を間違えないように申告・納税するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。タンス預金はいずれ税務署に知られてしまい、様々な罰則が課せられてしまうことが理解していただけましたでしょうか。
そのため、タンス預金は相続税対策にはならないだけでなく、余計なリスクを負ってしまうことにもなりかねません。節税のためであればタンス預金を隠し通すという方法ではなく、その他さまざまな有効的な節税対策がありますので、決して悪意のある節税は避けるようにしましょう。
税理士法人ブライト相続 戸崎貴之 監修
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